雪が溶けるのは当たり前?
11月にして、まさかの雪。「明日、降るかな〜」「いや、この寒さじゃ降らないでしょ」なんて言ってたら、朝になって雨が雪に変わってビックリ。
『ゆきのひ』 エズラ・ジャック・キーツ 文・絵 / きじまはじめ 訳 偕成社
子どもの頃、雪が降るのが嬉しかった。ふわふわの雪に足を踏み入れるあの感触。まだ誰も足を踏み入れていない真っ白な雪に、自分だけの足跡をつけたときの、誇らしさみたいなもの。一人で雪遊びも楽しいし、友達との雪合戦や雪だるま作りも楽しい。寒さなんておかまいなし。
そんな「ゆきのひ」の子どもの、喜びや楽しみが描かれたこの絵本。雪の絵本といえば、真っ白なページが多い印象だけれど、この絵本はとにかく色彩の鮮やかさが印象的。ページをめくるのもワクワクするほど。雪の白さが引き立って見える。
はじめは「色がきれい!」と、この絵本を楽しんでいた7歳の息子。何度か読むうちに、あるシーンで呟いた言葉に悲しくなったことがある。それは、主人公のピーターが、明日遊ぼうとポケットにしまっておいたゆきだんごが溶けて悲しんでいるシーン。
「バッカじゃん!雪が溶けるのなんて、当たり前じゃん」
当たり前…か。この頃、息子の口からよく出てくる言葉だ。小さい頃には、あらゆることに驚き、感動していたはずなのにね。知識や経験が増えるうちに、当たり前でなくなることが増えていく。でも「なんでこうなるんだろう?すごいな。おもしろいな」と思う子どもの気持ちは、持ち続けていてほしいなと思う。そう思いながら、子どもの成長にともない「そんなの当たり前でしょ、もう分かるでしょ」という態度が増えている自分に気づく。親がそれじゃあ、子どももそうなっちゃうじゃん、と自分にツッコミ。
なんでも当たり前と思わずに、子どもと一緒に驚いたり感動したり、「すごいね。なんでだろうね」って一緒に考える。そんな親でいたいな。そのほうがきっと、親も楽しい。世の中、当たり前ばかりになっちゃったら、つまんないよね。
次回の「おとなの絵本クラブ」は12/8(木) 10:00〜
テーマは「あったか〜くなる」絵本。「ゆきのひ」をはじめ、冬ならではの絵本も持参しようかな〜。お外が寒くたって、火鉢を囲んで絵本を読んで、あったかランチを食べれば身も心もホッカホカ!
詳細・お申し込みはこちらから。
きょうだい喧嘩
『にいさんといもうと』 シャーロット・ゾロトウ 作 / メアリ・チャルマーズ 絵 / 矢川澄子 訳 福音館書店
きょうだいって不思議だ。同じ両親から生まれてきているのに、顔も性格も全然違う。一人っ子で育った私からすると、兄弟げんかも不思議でならない。仲良く楽しそうにしているな〜と思うと、いつの間にか喧嘩…。
もうすぐ8歳の息子と、3歳になったばかりの娘。娘が生まれる前は、5歳も離れているし、性別も違うから、兄は妹をさぞ可愛がるだろうと思っていた。ところがどっこい、それはただの妄想。兄は容赦なく、妹をいじめる。散々からかわかわれた娘は「やめて〜!!!」と怒って泣きわめき、ほぼ毎晩のように大騒ぎ。兄妹喧嘩が始まると、つい「いい加減にしろ〜!」と怒鳴りたくなってしまう…。
そのくせ妹は「おにいちゃ〜ん」と寄って行くし、兄は兄で寄ってくる妹を愛おしそうにぎゅっとする。その姿に、カメラを向けずにいられない親バカここにアリ。
きょうだいって、そんなものなのか?
一人っ子で育った私には、2人の繰り広げる世界はもう摩訶不思議。
以前に、同じく一人っ子で育った知人が、こんなことを言っていた。
「結婚したばかりの時は、夫に何か言われる度に喧嘩ふっかけられてるような気持ちになったんだよね。でも、しばらくして『あ、喧嘩じゃなくて話し合いたいだけなんだ』って気づいたの。一人っ子だから、そういうの慣れてないんだよね〜。」
これに激しく共感した私。私も、夫から急に責められたような気持ちになって「どうしてそんな言い方するの!?」なんて言ってしまうことがある。夫からすれば、話し合いたかっただけのことなのに。もう結婚して10年近く経つっていうのにまだ慣れず、応戦モードになってしまうこと度々で反省する。
兄妹喧嘩は、コミュニケーションの練習の場みたいなものなのかもしれない。自分のしたいことと相手のしたいことの折り合いのつけ方、距離感の保ち方、相手の気持ちの察し方…そんなことを学ぶために、きっと必要な過程。それを小さいうちに家庭の中でできるなんて、幸せなことじゃないか!一人っ子としては、うらやましくなってきたぞ。
喧嘩している様子は、外野から見ていて心地がいいものではない。だから、つい止めてしまいたくなるのだけれど。もっと自由に泳がせたらいいんだろうな。親が心地よいように…なんてしようとしても無駄。「一人っ子で慣れてないだけ。これは修行じゃ」と言い聞かせて…今日も兄妹喧嘩の渦の中に身を投じようじゃないか。
兄妹喧嘩の声にイライラっとしてしまった時のおクスリのような絵本が「にいさんといもうと」。
にいさんにからかわれ、泣き出す妹。その姿は、我が家の子どもたちみたい。特に、妹をからかって笑う兄さんの顔!「ヒャッヒャッヒャッ!」って感じの、わるそう〜な顔が、息子そっくり。何度も読んでるのに「ほら見て、そっくりだよ!」と言って見せずにはいられない。読む度にみんなでクスクス笑う。そして、最後のシーンで、きゅんとする(それはたぶん親だけ)。
絵も文も、かなりツボ。男は青で、女はピンク、みたいなお決まりのような色合いでないのも好き。同じくシャーロット・ゾロトウ作で、「ねえさんといもうと」という作品もあるようです。
次回の「おとなの絵本クラブ」は12/8(木) 10:00〜
テーマは「あったか〜くなる」絵本。開催場所であるもえぎ家の料理びとHARAMIRAIのランチ付き♪ あったか〜くなるお雑煮に、美味しい副菜が待っています。古民家で七輪や火鉢でお餅を焼くなんて、それだけでワクワク! 大人同士でじっくり絵本の世界に浸り、美味しいごはんを食べながら、楽しい時間をご一緒しませんか?
詳細・お申し込みはこちらから。
子どもの心をゆさぶる絵本探しの旅
「どうして一緒に絵本を読んでくれなくなっちゃったの?」
ここ最近、寝る前に息子にぼやく時間が多くなっていた。「もっともっと(読んで)!」とせがむ娘(3歳)に対し、隣で別の本に集中している息子(7歳)。うーん、家族バラバラな感じが、どうにも切ない…。
図書館で選ぶ絵本は、だいたい日本の昔話かどこかの国の民話。好みがハッキリしていて、絵本が大好きだった息子だが、小学校に上がってからは、ほとんど本に親しまなくなってしまった。学校の図書室から借りてくるのは、ちょっと俗っぽい感じの児童向け図書や、アニメ絵本のようなもの。ぶあつ〜い「藤子・F・不二雄大全集」シリーズも大好き。
もちろん本人が好きで選んでいるので、それ自体を否定するつもりはない。私だって漫画は好きだったし、藤子先生の漫画は実際に面白いし。でもやっぱり、あんなに絵本が大好きだったのに…もう少し読み物っぽいものを読んでほしいな…。そんな思いが消せずにいた。
幼年向けの児童文学作品を色々と借りてきては、「これどう?」と手渡してみたものの、あまりハマらず…。3歳の娘も、あまり長い読み物は飽きてしまうし、息子と「一緒に読む」ことは諦めろということなのかなぁ…。そんなことを思っていた時に出会った1冊。
きえた犬のえ―ぼくはめいたんてい (ぼくはめいたんてい 新装版)
- 作者: マージョリー・ワインマンシャーマット,マークシーモント,Marjorie Weinman Sharmat,Marc Simont,光吉夏弥
- 出版社/メーカー: 大日本図書
- 発売日: 2014/04
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
11/17(木)に調布市立図書館主催の「 子どもの本に親しむ会」で講師を務められた小宮由さんが翻訳・編集された本のひとつして、展示されていた。
子どもの探偵ものか〜と、なんとなく借りて帰ったら、これが見事に息子にヒット。久しぶりに布団の中で一緒に読み、読み終わった後に「これ他のシリーズもないの?」と一言。「あ〜、そういえばあったよ。今度見に行ってみる?」と冷静に返しつつ、心の中でガッツポーズ。
次のお休みに、一緒に図書館へ。司書さんに「ぼくはめいたんてい」シリーズをずら〜っと並べてもらい、その中から気になるものを4冊選んで借りて帰ってきたのだった。(このシリーズ、今では17巻まで出ているらしい!)
おかげで、ここ数週間は、このシリーズを寝る前に一緒に読んでいる。それなりに長いお話で、挿絵も少ないけれど、3歳の娘も一緒に静かに聞いている。それだけで、寝る前のあんなに寂しかった心が、ほこほこする。
ただ寒くて同じ布団に入りたいだけかもしれないけどさ。
母ってものは、単純だ。
小さな男の子が、ちょっとした事件の謎を解決していく様子は、幼年向けとはいえ、大人でもなかなか面白い。 探偵らしく振舞いながらも、パンケーキが大好きだったり、ママに手紙を書いていたりと、子どもらしい一面が垣間見られる主人公の様も可愛い。主人公が子どもだから、自分でも探偵になれそうって思ってワクワクするのだろうか。
読みながら「え、なんでだろう?」「あ、わかった!」なんて、つい口から出てしまう。子どもと一緒に考える時間も楽しい。
きょうりゅうのきって―ぼくはめいたんてい (ぼくはめいたんてい 新装版)
- 作者: マージョリー・ワインマンシャーマット,マークシーモント,Marjorie Weinman Sharmat,Marc Simont,光吉夏弥
- 出版社/メーカー: 大日本図書
- 発売日: 2014/07
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
▲娘はこの巻が気に入ったらしい。何度も「かいじゅうのきって」と言い間違えては兄に突っ込まれてる…
講演会当日、小宮さんのお話もとても良かったので、一部、引用させていただきます。
「絵本は、子どもがはじめて出会う文学。だから、すぐれたお話を選んでほしい。すぐれたお話とは、人の喜びを我が喜びとし、人の悲しみを、我が悲しみとするお話。そして、幸せとは何かを伝えるお話だと思っています」
「絵本は、ためになるのものではなく楽しむもの。だから、親が『楽しい』と思う本を選ぶことが一番です。大人が読んで価値がない、つまり面白くない、と思う本は、10歳の子どもにとっても価値はないのです」
そうそう。せっかく読むからには、大人も子どもも一緒に楽しめて、幸せな気持ちになれる絵本がいい。私が「おとなの絵本クラブ」を開催するのも、根っこの思いはきっと同じ。「絵本って楽しい!」という思いを一緒に育める大人が増えれば、その子どもたちに伝わっていくはずだから。まずは大人が楽しんじゃおう。
それから、私のように「読んでほしいと思うものとは違う絵本を、子どもが選んでしまう」という参加者の方には、こんな風に答えられていました。
「大人だって、週刊誌とか読みたい時もあるでしょ?それもあっていい。いい絵本を大人が手渡してあげれば、帰る場所を知っているから、戻ってこれるから大丈夫」
本に限らず、子どもが触れるものについて、悩むことはこれからもたくさんあるだろう。そんな時にいつでも「帰る場所を知っているから大丈夫」と思っていたい。だからこれから先も、子どもたちの心をゆさぶる絵本探しの旅を、私はずっと続けていくんだと思う。なんて大げさかもしれないけれど。そのくらい、絵本の時間が好きみたい。
小宮由さんは、翻訳家・編集者でありながら、東京・阿佐ヶ谷で「このあの文庫」という家庭文庫を開かれている方。「『この』よろこびを『あの』こに」という思いが込められた文庫のネーミングも素敵。友人が以前に「このあの文庫」に取材に行った時、並んだ本棚の美しさに感動したとか。「手に取りやすいように本を置いてある」こと、家庭でも大事なことなんだろうな。「いつでも帰っておいでね」ってな具合に、ね。
その魅力を垣間見たい方は、友人が書いた小宮さんへのインタビュー記事も是非!
小宮さんのように家庭文庫を開くことは、ちょっとした夢。子どもたちに本を手渡せる人の手は、たくさんあるといいなと思う。とはいえ、絵本絶賛満喫中の人たちが家にいるし、まだまだ先かな〜。
病気の子がうらやましい?
8歳の兄が「おなかいたい…」というと、連動するように「おなかいたい…」と言う3歳の妹。なんでも兄の真似をしたがる子だし、「お兄ちゃんもお休みなら私も!」っていう、いつものパターンかな。そう思っていたら、今朝は本当に調子が悪かったらしい。お腹からくる風邪にやられている模様。
近しい誰かが調子を崩すと、なんとなくうらやましくなって「自分も…」となるのは、人間の心理なのだろうか? 妹が体調を崩して兄が「ぼくも!」となる逆パターンも、よくある。 そんな「病気の子がうらやましくなる」ストーリーが出てくるこの絵本が最近のお気に入り。
げんきなマドレーヌ (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
- 作者: ルドウィッヒ・ベーメルマンス,Ludwig Bemelmans,瀬田貞二
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1972/11/10
- メディア: 大型本
- 購入: 1人 クリック: 125回
- この商品を含むブログ (55件) を見る
修道院のようなところで集団生活をしている少女達のうちで、一番おちびさんで、何事にも物怖じしない元気な女の子が主人公。この主人公に、少し男っぽい一面も持ち合わせた、元気な娘をなんとなく重ねて見てしまう。
今は8歳の息子が小さい頃は、図書館で見かけても気にも留めなかった絵本だけれど、女の子がいると、選ぶ絵本も変わってくるんだなぁ。初めは、女の子たちの表情もすごく単純でみんな同じように見えるし、特別うつくしい絵という感じも受けず、いまいち?と思ったのだけれど。読めば読むほど、瀬田貞二さんの独特のゆったりとした日本語訳の文章のおかげか、ぐっと物語に引き込まれていく。
そして、12人の女の子達の表情が、単純なのに豊かに見えてきて、かわいくてたまらなく見えてくる。別の子が主人公だったら、どんなお話になったんだろうか?
しかし、よく食べ、よく笑い、よく泣く娘が弱ると、なんだか調子が狂う。弱った様子もまた可愛いけれど、早く元気になってね〜。
寒い日はいそいそと。
風が冷たくなってきたなーと思うと、せっせと作りたくなる。豚汁、けんちん汁、粕汁、クリームシチュー、ボルシチ…具がたっぷり入って、それだけで一品になるような汁物たち。
特に豚汁は夫の大好物とあって、しょっちゅう作る。起きた時に、寒いなぁ食べたいなぁと思ったらいつでも作れるようにしておきたい。だからこの季節はたいてい、必要な食材を冷蔵庫にスタンバイさせている。
代表選手は、豚バラ肉、白菜、ネギ、ごぼう、大根、人参、こんにゃく、豆腐、油揚げ、あと生姜は千切りとすりおろしをたっぷり。たまにきのこ色々、干し野菜、レンコン、白菜の代わりに玉ねぎやキャベツなんかも入れたりする。女としては、里芋、さつまいもを入れたいところだけれど、男の人はあまり好まないらしい。「どんどん甘みが抜けるし、汁がどろっとしてくるから」だって。まあわからなくもない。寒い寒いとぶーぶー言いながらも、いつも豚汁の食材を切る時は、「ああ、大好きな食材がそろう冬っていいなあ」と思う。
お椀によそったら、青ネギ、カブの葉や大根の葉の青みを。そして忘れちゃいけないのが、京都・原了郭の黒七味。ふわっと香り、ピリッと舌を刺激する美味しさ。「あったまるね〜」と言いながら、はふはふ食べる。これぞ、夫のおかわりが止まらない冬の味。
豚汁ってきっと、家庭によって味も食感も全然違うんだろう。入れる食材はもちろん、切る大きさ、切り方、食材の厚み、出汁や味噌も違う。稲刈りやお餅つき大会などの時に、他のひとが作った豚汁をいただくことがある。そういう時、いろいろ観察するのが楽しい。
「あ、うちよりも大根がぶ厚いな」とか、
「白菜はこのくらいクッタクタのほうが美味しいな」とか、
「お豆腐がゴロッと大きいのもいいな」とか…。
他のひとが作った豚汁を食べると、「あ、こんな風に作るのもいいな」って浮気してみたりするんだけれど、やっぱり自分の作り方に戻っていく。そういうのが子ども達の記憶に刻まれて「おふくろの味」になっていくのだろうか?
寒い日はいそいそと。具沢山のスープを作って食べたいのだ。ぶ厚い鍋でコトコトしているうちに、いつの間にか寒さも忘れてしまう。いや、そんなことはないか?
料理は楽しい。どんな食材で、どんな風に切って、どんな味付けにして、どの器でどうやって食べよう?
木枯らしがピューピューする今日のような日は、お留守番しながら料理の楽しみを味わう子ぐまの姿がかわいいこの絵本が読みたい。最後に出てくる、母とのやり取りも大好き。あったか〜いお話です。
次回12/8(木) 10:00〜開催予定の「おとなの絵本クラブ」は、「あったか〜くなる絵本」がテーマ。絵本についてじっくり語ったあとは、もえぎ家の料理びと「HARAMIRAI」のランチも一緒に楽しみましょう。
昨日開催された「調布系ワークスタイルをまちのみんなでつくろう」というイベントで行ったお味噌汁ワークショップも大好評だったHARAMIRI。
お手製お味噌にお好みの薬味を混ぜて味噌玉を作り、お好みの具と、あったか〜いお出汁を注ぐだけ。でも、自分でシャーコシャーコと削ったカツオブシや薬味の香りがふわ〜っ。とってもシンプルだけど、美味しくて、あったかくて。「思わずこぼれてしまった」と言わんばかりの「おいしい〜」の声がたくさん聞かれて、幸せな時間でした。どんな味になるかなぁと想像しながら作るのって、本当に楽しい。そして、あったか〜くなる食べものっていいなぁと改めて感じました。(私のお気に入り薬味は菊花!この季節ならではですね。)
12月の「おとなの絵本クラブ」でも、あったか〜くなるランチを皆さんで楽しめるよう、ぬくぬく企画中です。詳細のお知らせをどうぞお楽しみに!
ほんとうに私はいい母親かしら。
更新が滞っているうちに、すっかり寒くなってしまいました。いつの間にか秋を通り越して、すでに冬のような寒さ。お布団にもぐりこんだ子ども達の手足の、まあ冷たいこと。
子ども達は、私が読む絵本を眺めながら、冷えた足を私の足の間に突っ込んでくる。その度に、ふっと自分の幼少期を思い出す今日この頃。寒くてたまらない時、母の首元に手のひらや甲を交互にあててみたり、母の太ももに足の裏をぴたっとくっつけては、自分の手足を温めていたっけ。
ぞっとするくらい冷たかっただろうに、母に嫌がられた記憶は一度もない。あったかかったなぁ…。今の私は、「もうっ冷たいよう!」と子ども達の手足をはらいのけてしまう時もあるのに、ね。
「母にもっと愛されていたかった…」
自分の家庭を築くまで、いや、子どもが生まれてしばらくは、そんなコンプレックスを抱えていた私。愛されて育ったという感覚はあまりなかった。でも、こうして幼少期のことを思い出してみると、たしかに愛されていたんだと思う。母は母なりの方法で、愛情表現をしてくれていたのだと、今は思える。
それなのに「私は愛されていないかも」と思っていたのは、大きくなってから自分自身で植え付けた思い込みなのかもしれない。「○○ちゃんのお母さんはこんなことしてくれてるのに」と思ったり、誰かの幼少期の話を聞いては「私もそんなふうに育ててほしかったな」と感じたり…。「あの人はこうなのに自分は…」と、誰かと「比べて」自分の幸せ度をはかるようになってしまった頃からだろうか。
冷たい手足を温めてくれる母といえば、思い出す絵本がひとつ。
小狐が生まれて初めて目にする雪景色。「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする。」とうったえる小狐の手に、「はーっと息をふっかけて、ぬくとい母さんの手でやんわり包んで」やる母さん狐。日本語以外ではどうしたって表わしきれないだろうと思えるこのなんとも言えない表現も手伝い、母の温かさがひしひしと伝わってくる。
自分は、子ども達に接する時、こんなにも温かくいられているだろうか?
初めて見た世界への驚きや感動を素直に表す小狐。その姿に、自分の子どもを重ねる。真っ白な雪に反射する太陽の光を見て「眼に何か刺さった」とびっくりしてみたり、「まんまるな眼をぱちぱち」させてあたりを見回してみたり…そんな時期は、小さいうちだけ。それなのに、目の前の家事や、自分の人生のことに気を取られて、うっかりこの愛おしい瞬間を見落としてしまいそうになる自分にハッとする。そう、今だけ、今だけなのにね。
そんな温かさに欠けた自分に、「こんな母親でいいのかな」と悩んでしまうことがある。でもそういう時はだいたい、誰か他のお母さんと「比べて」いる時なんだと思う。「あの人はこんな風に子育てできているのに…」とかね。「いい母親」かどうかなんて、本当はないんだと思う。それはきっと、自分で決めているだけのこと。母なりの方法で愛してくれていたはずの母に、いつの間にか誰かと比べて「愛してくれなかった」と勝手に決めつけていたのと同じことなのかな。
母親にも、子どものことばかり考えていられない時もある。だって、この絵本に出てくる母狐も。「かあいい坊や」をたった一人で自分が「怖い」と思っている人間の世界へ送り出してしまうというツッコミどころもあるじゃないか。いい母親として描かれているようで、母親だってひとりの人間(一匹の狐か)であることを、あえて描いているのか? 母親だって完璧じゃないものね。
ああ、この愛おしい瞬間にちゃんと向き合えていなかったな。
そう気づいた時に、自分なりの方法で挽回すればいいのだ。きっと。昨日はだめだったけど、今日はしっかり向き合えたから、まぁいっか。そのくらいの気持ちでいたい。
ほんとうに私はいい母親かしら。
ついそんな思いに苛まれる時は、そう思うようにしよう。
私は、私なりの方法で愛情表現をするのだ。
さて、しばらく開催できていなかった「おとなの絵本クラブ」ですが、12月に復活!今回は、開催場所のもえぎ家の料理びと「HARAMIRAI」とのコラボ企画。「あったか〜くなる絵本」をテーマにした絵本を読み合ったあとに、「HARAMIRAI」のあったか〜くなるランチを一緒に囲みながらお話しましょ、という企画をぬくぬく温めています。
「手ぶくろを買いに」も、私の中で「あったか〜くなる絵本」のひとつ。 そのほかにも身も心もぬくぬくする絵本を持参します。もちろん、いつものごとくお気に入り絵本の持ち寄りも大歓迎。
日時は12/8(木) 10:00〜13:00頃を予定しています。
また詳細が決まりましたらお知らせします!
夏なんて、大嫌いだったのに。 〜#3 夏に読みたい絵本〜
じりじりと照りつける太陽。
真っ青な空に、入道雲。
大きなひまわり。セミの声。
「あぁまたやってきた……」と思ってしまうこの季節。
じっとりベタベタしたこの空気が苦手で、夏は大嫌いだった。
なのに。なのに。
夏のイメージを体いっぱいに取り込んでいたら……
不覚にも、あぁ夏っていいじゃないかって思っちゃったじゃないか。
美しく切り取ってくれちゃう絵本って、ニクイ。
「おとなの絵本クラブ」第3回のテーマは、「夏に読みたい絵本」。
「実は夏って嫌いなんですよね」って話したら、参加者の皆さん大笑い。
そりゃそうか。
でも、夏に対する嫌なイメージを壊してみたかったのかもしれない。
あの色や、音、空気は、夏限定。
たくさんの夏の絵本に触れて、夏の話をしていたら、
その愛おしさに気付かされてしまった。
例えば、波に揺られながら冒険に出たような気分になる海の世界。
それっ、と元気いっぱいにとびこめた時の喜び。いぬかきに、イルカ・ジャンプ。
おばけが出るかもと勝手に想像して、きゃあきゃあ騒いだり。
水しぶきをあげた途端、葉っぱについたしずくの中に自分を見つけたり。
まぶしい太陽の下で、青々とした緑に飛び込んで探し出す、クワガタムシ。
暑くてたまらないのに、走って走って走って、ハァハァ言っている自分。
全体が白っぽく感じる朝の空気。
なんだか興奮して眠れない夜。
浴衣を着て、ちょっと浮き足立つように出かける夏祭り。
全て、絵本の中に切り取られた世界。
夏だけの特権。
切り取られると、キラキラ見えてくるから不思議。
暑い暑いとあんなに言っていたのに、いざ終わってしまうと、恋しくなる。
それが夏っていうやつなのかもしれない。
毎年そうなのに、忘れてるんだな。私ってば。
さあこい、夏!
今年こそ体いっぱいで味わってしまおう。
うだるように蒸し暑くたって、息苦しくたって、
あの音や香りを思う存分、味わってやろうじゃないか。
と、おとなの絵本クラブが終わったあとは、鼻息荒くなっていたくせに。
この3連休のうだるような暑さには、
やっぱりちょっぴり怖気付いてしまった……。
だって、数十年、夏嫌いとして生きてきたんだもん。
でもそんな時は、夏の絵本たちを取り出そう。
いいじゃん、夏。最高じゃん、夏限定。って思い出せるから。
そう思わせてくれた絵本にたくさん出会えて嬉しかったです。
参加してくださった皆様、ありがとうございました。
前言撤回。
やっぱり夏が好き!
「おとなの絵本クラブ#3 〜夏に読みたい絵本」で読んだ絵本
- 『はちうえはぼくにまかせて』(ジーン・ジオン作 / マーガレット・ブロイ・グレアム絵 / 森比左志訳 ペンギン社)
- 『お化けの海水浴』(川端誠 作・絵 BL出版)
- 『わにわにのおでかけ』(小風さち 作 / 山口マオ絵 福音館書店)
- 『ぐりとぐらのかいすいよく』(中川李枝子 作 / 山脇百合子 絵 福音館書店)
- 『ねずみとくじら』(ウィリアム・スタイグ 作・絵 評論社)
- 『なつのあさ』(谷内こうた 作・絵 至光社)
- 『なつのいちにち』(はたこうしろう 作 偕成社)
- 『みずたまレンズ』(今森光彦 作 福音館書店)
- 『めがねうさぎのうみぼうずがでる!』(せなけいこ 作・絵 福音館書店)
当日、話題にあがった絵本と一緒に、ブクログの本棚にまとめています。(それぞれのレビューは書いていません) 今回は、絵本に詳しい方が多かったこともあり、とにかくたくさんの絵本や詩の本、童話にも話が広がりました。絵本を起点に、これだけ話が広がるのって、面白い。
次回の「おとなの絵本クラブ」は8月下旬に開催予定
これまで、絵本が大好きな人が中心に来てくださっていたので、次回は「絵本はあまり好きじゃないんだけど……」って方にも楽しめる場にできるといいなぁと思っています。
ちなみに、8月は開催場所の「もえぎ家」にて、コケシ展開催中なので、コケシに絡めてやろうかどうしようかな〜と悩み中……。
詳細は改めてお知らせしま〜す。