おとなの絵本クラブ

大人目線で楽しむ絵本や児童書の記録。調布市・つつじヶ丘の古民家「もえぎ家」を拠点に、絵本を読み合い、語り合う会を開催しています。

大人になるって……?

「どうして大人って、悲しくても泣かないの?」

昨日、小学校からの帰り道、3年生の長男に聞かれた。数年前に死んでしまった祖父母の飼い犬のことを急に思い出して悲しくなったのだ。

「悲しくても、しくしく涙がこぼれるくらいなの? ぼくは我慢しても溢れちゃう」

口元が少しずつへの字になっていく。ランドセルはどんどん小さく見えるようになってきたけど、まだまだ子どもなんだなぁ。

「悲しいよ。でも大人になるとさ、わーんって泣けなくて、我慢しちゃうんだ。おかあさんも子どもの頃はよく泣いてたよ」

何気なく口にした自分の言葉にハッとする。大人になるって、そういうことなのか。いつから感情をおさえるってことをするようになったんだろう……?

 

先日読んだ『風にのってきたメアリー・ポピンズ』に登場した、双子の赤ちゃんジョンとバーバラを思い出す。日の光やムクドリとおしゃべりを楽しむ双子達には、日の光やムクドリの言葉がわからない兄や姉のことが理解できない。兄や姉も前にはわかっていたが、忘れてしまったのだと説明するメアリー・ポピンズ。理由を聞く双子達に、彼女はこう言う。

「おおきくなったからです。」

そして双子達にも、ムクドリの言葉がわからなくなる日が訪れるのである。

 

あらゆる生き物とやり取りすることも、感情のままに涙を流さなくなることも、大きくなるということ、大人になるということなのかな。五感に蓋をしていくようで、なんだか寂しい。

子どもってこんな気持ちなのか、こんな風に世界を見ているのか……。育児書のどこを探しても見つからない「子どもとは」が描かれていた気がする。私が絵本や童話をもっともっと読みたいと思うのは、子ども心をもっともっと分かりたいからなのかも。日々、子どもの謎な行動を怒ってしまうことが多い私には、子ども心を思い起こす必要があるのである……多分ね。

それにしても、メアリー・ポピンズって、魔法使い? 妖精? 子どもの心を持ち続けている大人? 何者なんだろう……。これだけ冷たくそっけないのに子どもたちから絶大な信頼を受けているのはなぜ? それ以外にも話の隅々に謎がいっぱい。それでいて、続編も含めて再読したい魅惑的な童話です。

風にのってきたメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)

風にのってきたメアリー・ポピンズ (岩波少年文庫)