きょうだい喧嘩
『にいさんといもうと』 シャーロット・ゾロトウ 作 / メアリ・チャルマーズ 絵 / 矢川澄子 訳 福音館書店
きょうだいって不思議だ。同じ両親から生まれてきているのに、顔も性格も全然違う。一人っ子で育った私からすると、兄弟げんかも不思議でならない。仲良く楽しそうにしているな〜と思うと、いつの間にか喧嘩…。
もうすぐ8歳の息子と、3歳になったばかりの娘。娘が生まれる前は、5歳も離れているし、性別も違うから、兄は妹をさぞ可愛がるだろうと思っていた。ところがどっこい、それはただの妄想。兄は容赦なく、妹をいじめる。散々からかわかわれた娘は「やめて〜!!!」と怒って泣きわめき、ほぼ毎晩のように大騒ぎ。兄妹喧嘩が始まると、つい「いい加減にしろ〜!」と怒鳴りたくなってしまう…。
そのくせ妹は「おにいちゃ〜ん」と寄って行くし、兄は兄で寄ってくる妹を愛おしそうにぎゅっとする。その姿に、カメラを向けずにいられない親バカここにアリ。
きょうだいって、そんなものなのか?
一人っ子で育った私には、2人の繰り広げる世界はもう摩訶不思議。
以前に、同じく一人っ子で育った知人が、こんなことを言っていた。
「結婚したばかりの時は、夫に何か言われる度に喧嘩ふっかけられてるような気持ちになったんだよね。でも、しばらくして『あ、喧嘩じゃなくて話し合いたいだけなんだ』って気づいたの。一人っ子だから、そういうの慣れてないんだよね〜。」
これに激しく共感した私。私も、夫から急に責められたような気持ちになって「どうしてそんな言い方するの!?」なんて言ってしまうことがある。夫からすれば、話し合いたかっただけのことなのに。もう結婚して10年近く経つっていうのにまだ慣れず、応戦モードになってしまうこと度々で反省する。
兄妹喧嘩は、コミュニケーションの練習の場みたいなものなのかもしれない。自分のしたいことと相手のしたいことの折り合いのつけ方、距離感の保ち方、相手の気持ちの察し方…そんなことを学ぶために、きっと必要な過程。それを小さいうちに家庭の中でできるなんて、幸せなことじゃないか!一人っ子としては、うらやましくなってきたぞ。
喧嘩している様子は、外野から見ていて心地がいいものではない。だから、つい止めてしまいたくなるのだけれど。もっと自由に泳がせたらいいんだろうな。親が心地よいように…なんてしようとしても無駄。「一人っ子で慣れてないだけ。これは修行じゃ」と言い聞かせて…今日も兄妹喧嘩の渦の中に身を投じようじゃないか。
兄妹喧嘩の声にイライラっとしてしまった時のおクスリのような絵本が「にいさんといもうと」。
にいさんにからかわれ、泣き出す妹。その姿は、我が家の子どもたちみたい。特に、妹をからかって笑う兄さんの顔!「ヒャッヒャッヒャッ!」って感じの、わるそう〜な顔が、息子そっくり。何度も読んでるのに「ほら見て、そっくりだよ!」と言って見せずにはいられない。読む度にみんなでクスクス笑う。そして、最後のシーンで、きゅんとする(それはたぶん親だけ)。
絵も文も、かなりツボ。男は青で、女はピンク、みたいなお決まりのような色合いでないのも好き。同じくシャーロット・ゾロトウ作で、「ねえさんといもうと」という作品もあるようです。