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おとなの絵本クラブ

大人目線で楽しむ絵本や児童書の記録。調布市・つつじヶ丘の古民家「もえぎ家」を拠点に、絵本を読み合い、語り合う会を開催しています。

心の傘を開こう 〜#2 改めて読みたい思い出の絵本〜

開催レポート

「20歳になったら、やりたいことを見つけて邁進しているはず」
「24歳になったら、仕事がバリバリできる女性になっているはず」

やりたいことが分からず悩む高校生の頃や、
仕事に慣れずにもがく新社会人頃の私は、そんな風に考えていた。


でも、人生は「◯歳になると、◯◯ができるようになる」ものではない。

赤ちゃんが「1歳前後で歩き始め、2歳前後で会話ができるようになる……」などと書かれた育児書の通りには育たないのと同じである。彼らは、自分の体がどう動くのかを、好奇心のままに試していくうちに、できることが増えて行く生き物だ。

できるようになるのを待つのではなく、積極的にやってみる。

やってみたら楽しくなかった。

それならやめればいい。

楽しければ、もっと楽しいことができないかと、また進む。

やってみなければ、楽しいかどうかも分からないから。

 

4冊の絵本を通じて、そんなことに気づかされた「おとなの絵本クラブ」の第2回。大人同士で読みあい、語り合うほど、人生や子育てのヒントまで見えてきて、数日経った今でも余韻が残る会に。
(▶︎「おとなの絵本クラブ」とは

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▲「改めて読みたい思い出の絵本」をテーマに集まった4冊(写真には原書も含まれています)

 

大きいものへの絶対的な信頼感
三びきのやぎのがらがらどん


まずは子どもたちに大人気のノルウェーの昔話から。
大人から見ると、全員が同じ名前であることが不思議だし、トロルは何者なのか、そもそも悪者なのかも分からない。そして、あまりにあっさりした結末に、解釈が難しい……というのが参加者の共通認識だった。


でも、朗読に静かに耳を傾けるうちに気づいた。

「かた こと かた こと」

「がた ごと がた ごと」

「がたん、ごとん、がたん、ごとん」


この言葉のリズムの微妙な変化が、子どもには面白いのだ。
そして、悪者をやっつけるという、ストーリーの痛快さ。

耳で感じたあとは、みんなでトロル(トロール)の謎解き。
トロールものがたり」や映画の「となりのトトロ」にもヒントを見つけた。

個人的に考えさせられたのはこのシーンだ。
一番目と二番目に小さいがらがらどんは、トロルに出くわした時にこう言う。

「ああ どうか たべないでください。」

「すこしまてば、二ばんめやぎのがらがらどんがやってきます。
ぼくよりずっとおおきいですよ」

「おっと たべないでおくれよ。
すこし まてば、おおきいやぎの がらがらどんがやってくる。
ぼくより ずっと おおきいよ」


自分よりも大きいがらがらどんがトロルに食べられることはない、という確信がなければ、こんなことは言えない。小さい子どもが感じる、大きいものへの絶対的な信頼感はすごいのだろう。

また、このシーンについて、参加者の方が、中学生の息子さんの考えを共有してくれたのも面白かった。それは、「三びきのがらがらどんは、実は同一人物(やぎ)で、大きくなった自分が最後にトロルを倒すだろうという象徴なのでは。だから同じ名前なのだ」というもの。

はぁ〜、そうきたか。

小さいやぎに、かつての自分の姿を重ねていたら、だんだんかわいく思えてきた。
小さいものが「大きいものへの憧れ」を抱くことは、きっと自然なことなのだ。

「◯歳になったら…」だなんて甘い!と思っていた過去の自分、許してやろうかな。 

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▲同じ絵本でも、作家や訳者によって雰囲気が全く異なる。違いを楽しむのも面白い。

 

子どもは全てお見通し?
「ピエールとライオン」


そうは言っても、いつまでも「若いって、いいね」なんて呑気なことも言ってはいられない。あっという間に年は過ぎるのだ。私は20歳になってもやりたいことはよくわからなかったし、24歳になっても仕事に悩んでいた。

そんな時に、子どもが生まれた。

やっぱりここでも、子どもが生まれたからといって、母親になれるわけでもなかった。
「母性」ってやつが、勝手に私を母親にしてくるかとでも思っていたのだろうか……。

自分の人生もまだ悩んでいるのに、こんなに小さくか弱い生き物を育てられるのだろうかと不安になる。子どもが楽しく生きて行くために、母親として何ができるだろうか。そんな風に子どものことを考えながらも、子どもの行動を思い通りにしようとしている時がある。
 
「ピエールとライオン」には、そんな母親の行動を象徴するシーンが出てくる。

問題のシーンがこちら。

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お、おいおい母よ……

「なにが たべたい?」と聞きながら、なぜ帽子をかぶっているのか。
そう、頭の中は、この後に待っているお出かけという自分の目的でいっぱいなのだ。

母である参加者のみんな、ドキッ。

自分の目的のために、ご機嫌を取るようにあれこれ手を尽くす経験、あるわぁ。
そりゃあ、「ぼく、しらない!」と言われても文句は言えないよね……。

大人の都合では、子どもには響かない。動かない。ごまかせない。

「しらない!」「やだ!」と言い張る子どものスイッチをどう入れるか、
それは、口で伝えるのではなく、行動で示すことなのかもね。
そんな話にも花が咲いた。

 

あと、このシーンの面白いところは、子どもが頭にシロップをかけているところ。
子どもとの日々には、こんな珍事件が起こることはざらである。
だから「起きて食べて、どこかへ行って帰って寝る」だけでも、忙しい。

あまりの慌ただしさに、「はぁ〜っ」とため息が出てしまうこともある。
なーんだ笑える思い出じゃんって気づくのは、いつも後からなのだ。

映画のワンシーンのような家族の日常
「14ひきのこもりうた」


家族が眠りにつく前の、何げない数時間を切り取ったお話。
それでいて、映画でも見ているような壮大さを感じるのがこの絵本。
ページいっぱいに広がる絵の下に、字幕のように文章があるからだろうか。

絵からにじみ出る温かさと、美しく添えられた言葉に、一同うっとり。

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▲ここでも事件発生中。お風呂場で水鉄砲……そして顔に当たってる……。


こんなふうに、自分の人生も俯瞰して眺め、
映画の主人公にでもなったような気分で過ごせたら……
子どもとの何げない日常も、もっと輝いて見えるかもしれない。
珍事件も、ふふっと笑って過ごせるかもしれない。

ふと思いつく。
そうだ、ミクロな視点とマクロな視点を切り替えながら、暮らしてみようか。

珍事件が多発する日々は、ミクロな視点で面白がりながら過ごす。
時々、マクロな視点に切り替え、自分の人生を俯瞰して、映画を見るように眺める。

おお、上手に切り替えることができたら、なんだか楽しそうだ。
子どもとの日常と、自分の人生、どちらにも向き合える一歩かもしれない。
う〜ん、できるかな。
 

ふとしたきっかけで、人生は変わる
「おじさんのかさ」


参加者それぞれ思い出の絵本を紹介した時に、みんなが最も引きつけられていた絵本。

「迷った時に読むと、背中を押してくれる絵本です」

……え!?
タイトルと表紙とのギャップに、どんな内容なのか、みんな興味津々。

 

主人公は、表紙の通り、立派な真っ黒の傘がご自慢のおじさん。
濡らしたり汚したりするのが嫌だからと、雨が降っても傘はささない。

でも、たまたま聞いた子ども達の歌声をきっかけに、変わった。

「あめが ふったら ポンポロロン」

あめが ふったら ピッチャンチャン。」


 つられて同じ言葉を口ずさん途端、立ち上がってこう言う。

「ほんとかなあ。」
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そして、絶対に開かなかった傘をさして、その音が本当に聞こえるか確かめる。
 

「ほんとだあ。」 


おじさんが子どものように喜ぶから、面白い。


ミクロな日常に忙殺されていると、忘れてしまうことがある。
マクロなところにある自分のやりたいこと。
いや、覚えていても「今はその時じゃないから」と心にそっと閉まってしまう。 

でも、心の中で温め続け、待ちの姿勢でいても、何も起きないのだ。

ミクロな視点とマクロな視点をいったりきたりしながら、
「これだ。」というタイミングで、
閉じていた心の傘をパッと開いてみよう。

小さい一歩でもいい。
「ほんとかなぁ。」と疑いながらでも、
やってみないと、楽しさは分からないから。 

もちろん、出会いやタイミングもある。

勉強をやらない子どもも、スイッチが入る時が来るかもしれない。
焦らず「待つ」ことも大事だね、なんて子育て話にも花が咲いた。
なかなか待てないよね〜なんて笑いながら。

さあ、心の傘、いつ開けるかな。

 

人生や子育てのヒントは絵本の中に?
大人同士でもっと語りたい


ここまで書いてきたことは、複数人で話したから見えてきたこと。
私一人では、とうてい読み解けなかったことばかりだ。

絵本のことだけでなく、人生や子育てのヒントまでたくさん見つけてしまった。
あぁ、深い。
あぁ、大人同士で絵本を読み合う場は、なんて面白いんだろう。

実は、こういう場を作りたいと思いながらも、
私はずっと心の中に秘めていた。
おじさんにとっての傘のように、大事に大事に温めていた。

でも、やってみたらやっぱり面白かった。

「もう少し絵本に詳しくなってから」
「人が来なかったらどうしよう」
「私より絵本に詳しくて、お話も上手な人、多いしなぁ」
などと考えて踏みとどまっていたのだ。

その思考は「◯歳になったら◯◯ができる」と考えていたあの頃と一緒だ……。

でも、心の傘をぱっと開いてみて本当に良かった。
これからも迷った時は、この呪文を唱えよう。

あめが ふったら ポンポロロン
あめが ふったら ピッチャンチャン



参加してくださった5人の方々と、
「やってみなよ!」と背中を押してくれた「もえぎ家」のメンバーに、
そして、最後まで読んでくださった皆さんに、心からの感謝を込めて。

ありがとうございました。

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調布市・つつじヶ丘のちいさな平屋のおうち「もえぎ家」にて 

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▲「もえぎ家」は、昭和の香りが漂う古民家。不定期にイベントを開催しています 

 

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▲「もえぎ家」の料理びと「HARAMIRAI-ハラミライ」特製の甘酒アイス付きでした


 

「おとなの絵本クラブ#2 〜改めて読みたい思い出の絵本〜」で読んだ絵本

当日、関連してご紹介した絵本や、話題に挙がった絵本と一緒に、ブクログの本棚にまとめています。

おとなの絵本クラブの絵本棚 (otonanoehonclub) - ブクログ

(それぞれのレビューはまだ書いていません。これは余力があれば、追々。) 

次回の「おとなの絵本クラブ」は7/13(水) AM


持ち寄った絵本を大人同士で読みあい、感じたことを自由に語り合う「おとなの絵本クラブ」。次回は、7/13(水)AMを予定。テーマはシンプルに「夏」にしようかな。

詳細が決まったら、またお知らせします。