おとなの絵本クラブ

大人目線で楽しむ絵本や児童書の記録。調布市・つつじヶ丘の古民家「もえぎ家」を拠点に、絵本を読み合い、語り合う会を開催しています。

ここではないどこかではなく、ここで生きる。〜「ねずみ女房」を読んで〜

ここではない、どこかへ……。

自分の生きる場所は、もっと違うところにあるのではないか……。

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子どもが生まれて、子どものお世話や家事に追われている時、
そんな考えがふっと心に湧いてきたことがあった。
1日中、授乳にオムツ替え、家族の食事の支度、エンドレスに思える掃除に洗濯。
この家の外では、今どんなことが起こっているのだろうか。

そんな思いを抱いたことがある人に贈りたい「ねずみ女房」。
絵本というよりは、もう少し対象年齢は上の児童文学だ。  

地味なタイトルと表紙から、実ははじめはあまり興味をそそられなかった。
でも読み始めると、引き込まれるように一気に読んでしまった本だ。
モノクロの挿絵も、物語を静かに引き立てていて、とても美しい。 

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主人公は、家の中を全世界だと思いながらも、外の世界が気になるめすねずみ。いつものように窓の外を見るために窓じきいの上にのぼったときに、鳥かごがあることに気づく。鳥かごの中は、その家の子どもがつかまえてきた、きじばとがいた。豆ほしさに鳥かごに入り込んだねずみは、初めてはとの存在に気づく。

「何かおそろしいものがいる」と思いながらも、ねずみは少しずつ、はととの距離を縮めていく。はとの話を通して外の世界のことを知り、憧れを強めていくねずみ。

 ある時、ねずみははとを鳥かごから逃がしてやる。外の世界について話してくれる者がいなくなってしまった悲しみに打ちひしがれるねずみ。

 

そのあとに生まれて初めて、自分の目で星を見つけた。

でも、わたしには、それほどふしぎなものじゃない。だって、わたし、見たんだもの。はとに話してもらわなくても、わたし、自分で見たんだもの。わたし、自分の力で見ることができるんだわ。」

 

はとには、はとの生きる場所があり、自分には自分の生きる場所がある。

ここではないどこかではなく、ここで生きるには、自分の力を信じること。

そう気づいた女性の強さのようなものを感じる本だった。

 

もう少し、いいタイトルだったら良かったのにとも思った。
「ねずみ女房」とは、あまりに古めかしい。
でも訳者の石井桃子さんは、あえて「女房」という言葉を使っているのかもしれない。
それは、家の中が全てであった昔の女性を象徴させるため?
日本で最初に出版されたのが1977年。
これからの女性に託す思いが込められていたような気もする。

 

この本には、きっと色々な解釈の仕方があるのだと思う。

 「なぜ外の世界を知ったのに出て行かないのだろう!」と憤る人もいるだろう。

お互いに結婚相手がいるのに、思いを寄せ合うなんて!と思う人もいるかもしれない。 

そして、このねずみ女房がもし男だったら……
外の世界に出て行く冒険物語になりそう。

そんな風に妄想を楽しむのも、物語の面白いところだ。

 

 

実は、この本は、友人との読書会の課題本として読み始めたもの。
初めはそそられなかったのに読み始めたのは、読書会の日にちが決まっていたから。
おかげでいい本に出会えた嬉しさたるや。締め切りがあるって、いい。

 

読書体験を誰かと共有することは、とても楽しい。

課題本を読んで感想を話すことをメインにした読書会を開いている友人が書いた、
「読書会」についてのブログが面白いので、ぜひ。

hitotobi.hatenadiary.jp

hitotobi.hatenadiary.jp

本を通じて人と出会うおもしろさは、同じ本を読むという共通の能動的な体験をしてこそ得られる。

彼女がそんな思いで楽しそうに開催していた読書会。 

「おとなの絵本クラブ」は、大好きな絵本でそれができないかと考えて始めました。
絵本だけでなく、今日ブログに書いたような、児童文学を扱っても楽しそう。

 

読書会、いろいろなところで広まったら面白いだろうな。

 

 

取り上げた絵本(児童文学)について

『ねずみ女房』 (ルーマー・ゴッデン作 / ウィリアム・ペーヌ・デュボア画 / 石井桃子訳 福音館書店

 

一緒に読みたい本

『そして、ねずみ女房は星を見た <大人が読みたい子どもの本>』(清水眞砂子著 テン・ブックス)

 児童文学翻訳家・評論家である著者による、大人が読みたい子どもの本13作品(「ねずむ女房」を含む)への想いを綴ったエッセイ。読書会仲間に紹介してもらって、読んでみたくなりました。

 

扉の向こうには…… 〜#1 よし、やってみよう!〜

この扉の向こうには、どんな世界が待っているのだろうか。
ドキドキ。ワクワク。
扉を開ければ別世界が待っている。 

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絵本の扉を開く瞬間は、いつもそんな気持ちで臨みたい。
親子で一緒に扉の向こうに飛び込んで行けたら、家にいながらプチ旅行気分。
きっと最高に楽しい。


子どもが生まれて初めて絵本に親しむようになり、初めは「読んであげる」という意識だった。
子どもが面白がる理由がわからない絵本にもたくさん出会った。
でも、せっかく読むなら、親だって一緒に楽しみたい。

 

時々、夫やママ友と「この絵本のどこが面白いのか」という話をすることがあった。


ある人は、言葉の使い回しが面白いと言って、
ある人は、文章には全く関心がなくて、絵の世界観が素敵だと言う。
ある人は、読むと必ず泣いてしまうと言って、
ある人は、笑えて仕方がないと言う。
同じ絵本でも、人によって面白いほどに感じ取り方がまったく違う。

 

そうか、絵本の楽しみ方はひとつではない。
色々な視点から見たら、絵本の楽しみ方が何倍にもなるかもしれない。
大人同士であーだこーだ語ってみたら、扉の向こうの世界に子どもと一緒に思いっきり飛び込めるヒントが見つかりそう。

 


そんな思いから始めた「おとなの絵本クラブ」の第1回。

開催日の4/24(日)は、友人と運営しているもえぎ家オープニングパーティの日だった。

はじまりということで「よし、やってみよう!」というテーマを設定。
持ち寄り絵本の読書会として、ドキドキしながら告知した。

 

が、困ったことに事前のお申込者は1人。人の出入りは多かったので、その場にいた方に「絵本について語ってみませんか?」と声をかけてみた。男性が1人、おばあちゃんが1人、小学生のお母さんが2人と、小学生1人が参加してくれた。ほっ。

 

まずは、絵本にまつわる思いを自由に語ってもらった。

特に印象的だったのは、「幼い頃、母親に絵本を読んでもらっていた時の安心感を今でも覚えている」という男性の声。

 

「絵本を読んでいる時だけは、母親の声が優しかった気がする」なんて、子育て真っ最中の母親はぐっときてしまうではないか。絵本に出てくる言葉のリズム感の心地よさは、たしかに読み手の気持ちもリラックスさせてくれる。

 

語るうちに、思い出の絵本の記憶が、それぞれから溢れるように出てきた。

 

何度聞いても面白くてたまらなかった昔話の絵本、ちょっぴり怖いけれど読みたくなってしまう「モチモチの木」、小学校の教科書に載っていた「おおきな木」。読むと感情移入しすぎていつも子どもより先に泣いてしまう「だいじょうぶ だいじょうぶ」や「としょかんライオン」など……。

 

その人の思いも一緒に聞いているせいか、読んでみたくなってしまうから不思議。

ネット上でレビューを眺めるのとは、まったく異なる感覚だった。

 

絵本を実際に読んでみる時間も設けた。

 

主催者の私が「よし、やってみよう!」にちなんで持ってきた「うちのペットはドラゴン」。事前に申し込んでくださっていた方が持参してきてくれた「とけいのあおくん」。その場にいた方が「絵本はあまり好きじゃなかったけれど、この絵本だけはよく覚えている」と話してくれた「わたしのワンピース」。

 

特に「とけいのあおくん」を朗読してもらった時間は、特に新鮮だった。

 

主人公は、ある男の子の誕生日プレゼントに買われていった小さな目覚まし時計のあおくん。初めてセットした時間にベルを鳴らせるだろうかとドキドキしながらその時間を待っているお話。ページをめくるごとに「あおくん、大丈夫かな、できるかな」と、ドキドキした感覚は今でも覚えている。

 

自分が読み手だったら、あそこまでのドキドキ感はたぶん得られない。
絵本を読んでもらう子どもの気持ちがわかった気がした。

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第1回の「おとなの絵本クラブ」を開催してから。


子どもと絵本を読む時は、書かれた文章をできるだけ丁寧に読むようにしている。
子どもと一緒に、絵本の世界に飛び込んでいくため。


ガミガミ怒ってしまって、雑に読んでしまう日は、ぜんぜん楽しくない。
目の前にある文字を、ただ文字として受け取っているだけ。

 

みんなで絵本の世界に飛び込めた日は、気持ち良く眠りにつけることを知った。


絵本は、いろいろな物語の世界に連れて行ってくれる。
扉を開けば、そこは別世界への入り口。
どこでもドアみたいだ。
絵本という形をした、色々な物語への扉。

 

さあ、私はこれからいくつの「どこでもドア」を見つけられるだろう。

 

子ども達が純粋に絵本を楽しめるのも、きっとあと数年。
それまでに、たくさんの「どこでもドア」を取り出せる人になりたい。
そして、色々な世界へのプチ旅行を、子どもと一緒にめいっぱい楽しもうじゃあないか。 

  

「おとなの絵本クラブ#1 〜よし、やってみよう!〜」で読んだ絵本

  •  『とけいのあおくん』(エリザベス・ロバーツ作 / 殿内真帆絵 / 灰島かり訳 福音館書店) 

  •  『うちのペットはドラゴン』(マーガレット・マーヒー作 / ヘレン・オクセンバリー絵 / こやまなおこ訳 徳間書店
  • 『わたしのワンピース』(西巻茅子作 こぐま社)

当日、話題に挙がった絵本と一緒に、ブクログの本棚にまとめています。

(それぞれのレビューはまだ書いていません。) 

 

次回の「おとなの絵本クラブ」は7/13(水) 9:30〜

 


持ち寄った絵本を大人同士で読みあい、感じたことを自由に語り合う「おとなの絵本クラブ」。第三回のテーマは「夏に読みたい絵本」です。海・スイカ・ひまわり・お化け屋敷……夏といえば、どんなことを思い浮かべますか?

 

詳細・お申し込みはこちらから 

もうすぐ夏本番!第3回のテーマは「夏に読みたい絵本」(7/13(水))

夏と言えば、海・水遊び・流しそうめん・虫とり・スイカ・アイス・ひまわり……何を思い浮かべますか?

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「おとなの絵本クラブ」の第3回のテーマは、「夏に読みたい絵本」。

うだるように暑くたって、「夏ってやっぱりいいね」って思いたいから。
絵本で涼やかに夏のイメトレをして、夏本番に備えよう。

「今年の夏は◯◯してみようかな〜」なんてワクワクも発見できるかも!?

 

「絵本が好きで、他の人と絵本の楽しみを共有したい!」

「絵本の選び方が分からない…他の人はどんな絵本を読んでいるの?」

「子どもへの読み聞かせの時間がちょっぴり苦痛…もっと楽しみたい!」

……など、絵本に関心のある方なら、老若何女かかわらず、どんな方でも大歓迎です。


 *第2回の様子はこちら

 

【おとなの絵本クラブ#3 〜夏に読みたい絵本〜】

 ・日時 :7/13(水) 9:30〜11:30

 ・場所 :もえぎ家

 ・参加費:500円

 ・持ち物:夏に読みたい絵本

 ・定員 :6名(お子さん連れも歓迎です)

 

 *詳細・お申し込みはこちらから
(お申し込み後のご連絡は、もえぎ家のメールアドレスからお送りします)

 

心の傘を開こう 〜#2 改めて読みたい思い出の絵本〜

「20歳になったら、やりたいことを見つけて邁進しているはず」
「24歳になったら、仕事がバリバリできる女性になっているはず」

やりたいことが分からず悩む高校生の頃や、
仕事に慣れずにもがく新社会人頃の私は、そんな風に考えていた。


でも、人生は「◯歳になると、◯◯ができるようになる」ものではない。

赤ちゃんが「1歳前後で歩き始め、2歳前後で会話ができるようになる……」などと書かれた育児書の通りには育たないのと同じである。彼らは、自分の体がどう動くのかを、好奇心のままに試していくうちに、できることが増えて行く生き物だ。

できるようになるのを待つのではなく、積極的にやってみる。

やってみたら楽しくなかった。

それならやめればいい。

楽しければ、もっと楽しいことができないかと、また進む。

やってみなければ、楽しいかどうかも分からないから。

 

4冊の絵本を通じて、そんなことに気づかされた「おとなの絵本クラブ」の第2回。大人同士で読みあい、語り合うほど、人生や子育てのヒントまで見えてきて、数日経った今でも余韻が残る会に。
(▶︎「おとなの絵本クラブ」とは

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▲「改めて読みたい思い出の絵本」をテーマに集まった4冊(写真には原書も含まれています)

 

大きいものへの絶対的な信頼感
三びきのやぎのがらがらどん


まずは子どもたちに大人気のノルウェーの昔話から。
大人から見ると、全員が同じ名前であることが不思議だし、トロルは何者なのか、そもそも悪者なのかも分からない。そして、あまりにあっさりした結末に、解釈が難しい……というのが参加者の共通認識だった。


でも、朗読に静かに耳を傾けるうちに気づいた。

「かた こと かた こと」

「がた ごと がた ごと」

「がたん、ごとん、がたん、ごとん」


この言葉のリズムの微妙な変化が、子どもには面白いのだ。
そして、悪者をやっつけるという、ストーリーの痛快さ。

耳で感じたあとは、みんなでトロル(トロール)の謎解き。
トロールものがたり」や映画の「となりのトトロ」にもヒントを見つけた。

個人的に考えさせられたのはこのシーンだ。
一番目と二番目に小さいがらがらどんは、トロルに出くわした時にこう言う。

「ああ どうか たべないでください。」

「すこしまてば、二ばんめやぎのがらがらどんがやってきます。
ぼくよりずっとおおきいですよ」

「おっと たべないでおくれよ。
すこし まてば、おおきいやぎの がらがらどんがやってくる。
ぼくより ずっと おおきいよ」


自分よりも大きいがらがらどんがトロルに食べられることはない、という確信がなければ、こんなことは言えない。小さい子どもが感じる、大きいものへの絶対的な信頼感はすごいのだろう。

また、このシーンについて、参加者の方が、中学生の息子さんの考えを共有してくれたのも面白かった。それは、「三びきのがらがらどんは、実は同一人物(やぎ)で、大きくなった自分が最後にトロルを倒すだろうという象徴なのでは。だから同じ名前なのだ」というもの。

はぁ〜、そうきたか。

小さいやぎに、かつての自分の姿を重ねていたら、だんだんかわいく思えてきた。
小さいものが「大きいものへの憧れ」を抱くことは、きっと自然なことなのだ。

「◯歳になったら…」だなんて甘い!と思っていた過去の自分、許してやろうかな。 

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▲同じ絵本でも、作家や訳者によって雰囲気が全く異なる。違いを楽しむのも面白い。

 

子どもは全てお見通し?
「ピエールとライオン」


そうは言っても、いつまでも「若いって、いいね」なんて呑気なことも言ってはいられない。あっという間に年は過ぎるのだ。私は20歳になってもやりたいことはよくわからなかったし、24歳になっても仕事に悩んでいた。

そんな時に、子どもが生まれた。

やっぱりここでも、子どもが生まれたからといって、母親になれるわけでもなかった。
「母性」ってやつが、勝手に私を母親にしてくるかとでも思っていたのだろうか……。

自分の人生もまだ悩んでいるのに、こんなに小さくか弱い生き物を育てられるのだろうかと不安になる。子どもが楽しく生きて行くために、母親として何ができるだろうか。そんな風に子どものことを考えながらも、子どもの行動を思い通りにしようとしている時がある。
 
「ピエールとライオン」には、そんな母親の行動を象徴するシーンが出てくる。

問題のシーンがこちら。

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お、おいおい母よ……

「なにが たべたい?」と聞きながら、なぜ帽子をかぶっているのか。
そう、頭の中は、この後に待っているお出かけという自分の目的でいっぱいなのだ。

母である参加者のみんな、ドキッ。

自分の目的のために、ご機嫌を取るようにあれこれ手を尽くす経験、あるわぁ。
そりゃあ、「ぼく、しらない!」と言われても文句は言えないよね……。

大人の都合では、子どもには響かない。動かない。ごまかせない。

「しらない!」「やだ!」と言い張る子どものスイッチをどう入れるか、
それは、口で伝えるのではなく、行動で示すことなのかもね。
そんな話にも花が咲いた。

 

あと、このシーンの面白いところは、子どもが頭にシロップをかけているところ。
子どもとの日々には、こんな珍事件が起こることはざらである。
だから「起きて食べて、どこかへ行って帰って寝る」だけでも、忙しい。

あまりの慌ただしさに、「はぁ〜っ」とため息が出てしまうこともある。
なーんだ笑える思い出じゃんって気づくのは、いつも後からなのだ。

映画のワンシーンのような家族の日常
「14ひきのこもりうた」


家族が眠りにつく前の、何げない数時間を切り取ったお話。
それでいて、映画でも見ているような壮大さを感じるのがこの絵本。
ページいっぱいに広がる絵の下に、字幕のように文章があるからだろうか。

絵からにじみ出る温かさと、美しく添えられた言葉に、一同うっとり。

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▲ここでも事件発生中。お風呂場で水鉄砲……そして顔に当たってる……。


こんなふうに、自分の人生も俯瞰して眺め、
映画の主人公にでもなったような気分で過ごせたら……
子どもとの何げない日常も、もっと輝いて見えるかもしれない。
珍事件も、ふふっと笑って過ごせるかもしれない。

ふと思いつく。
そうだ、ミクロな視点とマクロな視点を切り替えながら、暮らしてみようか。

珍事件が多発する日々は、ミクロな視点で面白がりながら過ごす。
時々、マクロな視点に切り替え、自分の人生を俯瞰して、映画を見るように眺める。

おお、上手に切り替えることができたら、なんだか楽しそうだ。
子どもとの日常と、自分の人生、どちらにも向き合える一歩かもしれない。
う〜ん、できるかな。
 

ふとしたきっかけで、人生は変わる
「おじさんのかさ」


参加者それぞれ思い出の絵本を紹介した時に、みんなが最も引きつけられていた絵本。

「迷った時に読むと、背中を押してくれる絵本です」

……え!?
タイトルと表紙とのギャップに、どんな内容なのか、みんな興味津々。

 

主人公は、表紙の通り、立派な真っ黒の傘がご自慢のおじさん。
濡らしたり汚したりするのが嫌だからと、雨が降っても傘はささない。

でも、たまたま聞いた子ども達の歌声をきっかけに、変わった。

「あめが ふったら ポンポロロン」

あめが ふったら ピッチャンチャン。」


 つられて同じ言葉を口ずさん途端、立ち上がってこう言う。

「ほんとかなあ。」
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そして、絶対に開かなかった傘をさして、その音が本当に聞こえるか確かめる。
 

「ほんとだあ。」 


おじさんが子どものように喜ぶから、面白い。


ミクロな日常に忙殺されていると、忘れてしまうことがある。
マクロなところにある自分のやりたいこと。
いや、覚えていても「今はその時じゃないから」と心にそっと閉まってしまう。 

でも、心の中で温め続け、待ちの姿勢でいても、何も起きないのだ。

ミクロな視点とマクロな視点をいったりきたりしながら、
「これだ。」というタイミングで、
閉じていた心の傘をパッと開いてみよう。

小さい一歩でもいい。
「ほんとかなぁ。」と疑いながらでも、
やってみないと、楽しさは分からないから。 

もちろん、出会いやタイミングもある。

勉強をやらない子どもも、スイッチが入る時が来るかもしれない。
焦らず「待つ」ことも大事だね、なんて子育て話にも花が咲いた。
なかなか待てないよね〜なんて笑いながら。

さあ、心の傘、いつ開けるかな。

 

人生や子育てのヒントは絵本の中に?
大人同士でもっと語りたい


ここまで書いてきたことは、複数人で話したから見えてきたこと。
私一人では、とうてい読み解けなかったことばかりだ。

絵本のことだけでなく、人生や子育てのヒントまでたくさん見つけてしまった。
あぁ、深い。
あぁ、大人同士で絵本を読み合う場は、なんて面白いんだろう。

実は、こういう場を作りたいと思いながらも、
私はずっと心の中に秘めていた。
おじさんにとっての傘のように、大事に大事に温めていた。

でも、やってみたらやっぱり面白かった。

「もう少し絵本に詳しくなってから」
「人が来なかったらどうしよう」
「私より絵本に詳しくて、お話も上手な人、多いしなぁ」
などと考えて踏みとどまっていたのだ。

その思考は「◯歳になったら◯◯ができる」と考えていたあの頃と一緒だ……。

でも、心の傘をぱっと開いてみて本当に良かった。
これからも迷った時は、この呪文を唱えよう。

あめが ふったら ポンポロロン
あめが ふったら ピッチャンチャン



参加してくださった5人の方々と、
「やってみなよ!」と背中を押してくれた「もえぎ家」のメンバーに、
そして、最後まで読んでくださった皆さんに、心からの感謝を込めて。

ありがとうございました。

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調布市・つつじヶ丘のちいさな平屋のおうち「もえぎ家」にて 

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▲「もえぎ家」は、昭和の香りが漂う古民家。不定期にイベントを開催しています 

 

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▲「もえぎ家」の料理びと「HARAMIRAI-ハラミライ」特製の甘酒アイス付きでした


 

「おとなの絵本クラブ#2 〜改めて読みたい思い出の絵本〜」で読んだ絵本

当日、関連してご紹介した絵本や、話題に挙がった絵本と一緒に、ブクログの本棚にまとめています。

おとなの絵本クラブの絵本棚 (otonanoehonclub) - ブクログ

(それぞれのレビューはまだ書いていません。これは余力があれば、追々。) 

次回の「おとなの絵本クラブ」は7/13(水) AM


持ち寄った絵本を大人同士で読みあい、感じたことを自由に語り合う「おとなの絵本クラブ」。次回は、7/13(水)AMを予定。テーマはシンプルに「夏」にしようかな。

詳細が決まったら、またお知らせします。

 

おとなの絵本クラブとは

「おとなの絵本クラブ」とは、

持ち寄った絵本を、大人同士で読み合い、語り合う会です。

7歳(男の子)と2歳(女の子)の母が主催しています。

 

絵本の世界にじっくり浸り、いろいろな人の視点に触れているうちに、

びっくりするほど、絵本の楽しみ方が広がっちゃう会。

 

子どもが何を面白がっているのかが理解できたり、

人生や子育てのヒントを絵本の中に見つけたりと、

そんなおまけがついてくることも。

 

他の人が持ち寄った中から、

素敵な絵本にも出会えるかもしれません。

 

子どものために絵本を読むなら、大人も思いっきり楽しめたほうが、

親も子どもも、きっと幸せな気持ちになれる。

絵本を子どものためだけにしておくのは、もったいない。

 

そんな思いで開催しています。 

 

会の内容はとってもシンプル。

あるテーマに基づいた絵本を持ち寄り、その場で朗読し、感じたことを語り合います。 

先生や生徒という関係ではなく、性別や年齢も関係なく、自由に。

 

ただそれだけ。

ただそれだけなのに、深い気づきがあり、

子どもと過ごす時間が、ずっと豊かになると信じています。

 

だって、絵本を読むことが、もっと楽しくなるから。

人生や子育ての指針になるような、とっておきの1冊が見つかるかもしれないから。

 

もちろん、お子さんがいない方でも、男性の方でも大歓迎です。

いろいろな人の視点が増えるほど、気づきが増えて面白くなりそう。

 

お気に入りの1冊が見つかりますように。

絵本について語れる素敵な仲間と出会えますように。 

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主な開催場所は、調布市・つつじヶ丘にある「もえぎ家」。 

のんびりとした時間が流れ、昭和の香りが漂う古民家は、いるだけでも癒される。
そんな場所です。